我々が食品衛生および品質管理を考える時に、何を目標に考えればよいだろうか。

これまでの食品衛生法によると「この法律は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、

公衆衛生の向上および増進に寄与することを目的とする」としており、2003年に食品衛生法が

改正されたときには、「食品の安全を確保することにより、国民の健康の保護を図る」旨が規定

されました。つまり、国民の健康の保護を図ることが明記されましたが、健康という言葉は私た

ちの体の状態を表す表現であり、例えば頭がいいとか悪いとかいうのと同じで、必ず比較する対

象がなければ明確ではありません。したがって、この法律の目的自体が明瞭とは言えませんが、

食品衛生につきましても同じであり、現在のわが国の食品衛生行政を含む社会の食品衛生につい

ての認識も不明瞭といえるでしょう。

従って、我々が食品衛生を求めるときには具体的な目標が設定されなければ、ただ無駄な作業を

繰り返し行うことになってしまいます。

現実に発展途上国の食品衛生と先進国ではその目標と対策はおのずと異なってきます。わが国に

おいても、戦後間もないころの食品衛生は無菌化をめざすことであり、殺菌剤などの多用が行わ

れてきました。しかし、今ではすでに当時の厚生省によってそれまでの食品衛生課を廃止し、菌

をなくすことばかりではなく、食品によって健康を目指す必要性から食品保健課と名を改めると

いうところまでになっています。このようにわが国の食品衛生・品質管理というレベルや考え方

は非常に変化してきたといえるのです。

つまり、我々のように高度な衛生水準の中で食品による危害を考えるときに非常に難しいのは、

ただ単に菌数を減らせばよい、または添加物のように生産性にメリットがあっても疑わしい物質

は全て排除すればよいと言う議論ではないということです。評価をする範囲、つまり地域であっ

たり食材の種類であったり、または国民性などを明確にして考えなければ、それらの危害に対し

て正しく評価することは出来ません。

私たちの周りには過剰な食品衛生管理があるかと思えば、全く消費者を無視した食品製造施設も

あります。

確かにわが国の食中毒事件は非常に少なくなってきたことはすでに述べてきたところです。

ところが実はわが国の食品衛生を考えるときに、まだまだ解決しなければいけない

問題は存在しており、未だに根本的な解決策がとられていません。                                                                

                                つづく                           

                    食品・環境安全ネット事務局  池亀 公和