戦後、食品による危害としては最も身近であった病原菌による食中毒がその後急激に減少し、

今ではほとんどこれによる死者は出ていない状況にまでになりましたが、その結果微生物に対

することも含め免疫力が低下し、わずかなものにも感じる体質となり、我々自体が弱くなり、

また、逆に回りには抗生物質に耐性を持った微生物や有害な化学物質など多くの危害ファクタ

ーが新たに発生してきたという現実もあります。

サルモネラなどの病原微生物、フグなどの自然毒、農薬などの化学物質とともに、現在ではわ

れわれには全くわからない物質による危害がわれわれの食生活の中に潜んでいることも考えら

れます。そしてこれらの危害の中には、現在行われている品質管理や衛生管理では防ぐことの

できないものもあるかもしれません。

微生物による危害としては今から20年ほど前に堺において大きな事件を起こした腸管出血性大

腸菌O157があり、検査方法の開発によりその実態がつかめるようになったのが15年ほど前

のノロウイルスなどがあります。

 ところが、今後病原微生物の新たな出現も大きな問題ですが、よく解っていない化学物質、

そして確実に増えているアレルギー体質や奇病のことを考えると、むしろ真剣に考えなければ

いけない問題は残留農薬や残留薬物、食品添加物や遺伝子組み換え食品などかもしれません。

そしてこれらの物質は規制の範囲内であれば問題ないとされていますが、果たしてどこまで規

制の範囲が守られるのか、人体に対する影響はまったくないのかという根拠はむしろ明確では

ない部分がまだまだあります。

 このように考えると、わが国では食品危害についての問題は今後も大変大きな注目点となっ

ていくと思われます。ところが、食料の調達がグローバリゼーションの中で行われていること

を考えると、このようなことばかりに注目しているということは、木を見て森を見ない状況で

あると言えるかもしれません。

2002年1月28-30日に,モロッコで,国連食料農業機関とWHOの共催で,第一回の食料安全

基準世界フォーラムが開催されました.この会議は何かを決定しようという会議ではなく,何

が問題なのか,その問題から何を学ぶべきなのか,体験を共有しようという会議でした。

そこで、食料については南北問題,先進国による開発途上国の搾取,グローバリゼーションと

いった深刻な問題がありますが、この会議では,地球上では8億人が飢えと栄養失調で苦しん

でいるのに,先進国では,食料のゼロリスクを追求しており,食べ物がたっぷり食べられる人

々によって,食料の安全が議論されていると,強い批判が行なわれたのです。

全世界では、栄養失調の影響も有り食中毒による死亡者が、年間百万人以上といわれています

が、それを考えますと、農薬の使用や遺伝子組み換え食品など、簡単になくす方向で考えるの

ではなく、われわれは世界の中の一員としての議論も必要になるかも知れません。少しでも消

費期限の切れた弁当は捨ててしまうという社会にいると、本当に適切な食品衛生の在り方が見

えなくなってしまっているかもしれません。食品の流通がグルーバリゼーションになってきた

ことにより、まず各工程の中で、わが国にとっての食品衛生に標準をあわせることが大切です

が、さらに、世界における食品の供給を含めた食品衛生に目標をあわせることも必要となって

きています。食品衛生イコール細菌をなくすことという簡単な議論ではもうなさそうです。森

を見た衛生管理を考えなくてはいけないのでしょうね。

                             食品・環境安全ネット事務局