つまり、わが国においては食中毒事件は日常ではないことから、それの原因を作った企業にとっては危機となります。

その損害について少し触れると、1996年7月の堺市カイワレO157事件では、患者関連で39億

3400万円、堺市の事件関連予算(7,300人分の補償費用込み)22億5000万円、死者一名の補

償4330万円、カイワレ業界の損害22億円など、合わせて100億円近い損害が発生しています。

2000年6月の雪印乳業食中毒事件(被害者数14,000人)では、ブランド損失だけでも700億円

と言われ、合計で1,400億円の経済的損害が一事件で発生したと言われています。

ついでに、WHOの推計では、世界全体で見ると、全人口の5-10%(3-6億人)が食品由来の

病気にかかると言われているので、一人年間200$の損失として計算すると600-1200億$程度

が食中毒にかかる社会的費用と推算する人もいますが、これはかなり荒っぽい計算かもしれませ

ん。

現在、世界と比較してわが国では食中毒が企業にとっての危機といわれるようになるぐらい食の

安心安全が維持されているのは、わが国の文化とわれわれの先輩である微生物学者や保健所の先

生方たちが主導で、病原菌の研究からこれによる危害を防ぐことを考え、それを忠実にわが国民

が守ったことにより食中毒事故が激減したことは事実であろうと思います。

そのお蔭で、現在では食卓には微生物学的には非常にきれいな食材が増え、病原菌にはあまり縁

のない食生活となりました。

ところが、それと同時にまた食品中には、今までにない種類の化学物質などが含まれるようにな

り、確実に我々の体質が変化してきたことも事実であるとかんがえられます。そして、このよう

な現実は、過去にも世界的にも経験したことが無い、全く新しい食品衛生環境にいると言うこと

もできるでしょう。