2000~2008年に、ドイツのリスクアセスメント研究所が、検査検体由来のサルモネラの抗生物質耐性検査を行った。

 分離株は主に動物と食品由来のものであったが、飼料や環境由来も含まれていた。33,625株のうち48%が少なくとも1種類の抗生物質に耐性で、35%が複数のクラスの抗生物質に耐性であった。家畜および食品由来の株の耐性はかなり高かった。
ほとんどの抗生物質に関して、動物と食品由来のサルモネラ株の耐性率は、環境および飼料由来の株より高かった。また、テトラサイクリンやアミノペニシリンなどのように、以前からヒトおよび動物の治療に使用されているクラスの抗生物質に対する耐性率が高かった。WHOがヒトの治療に「特に重要」であると分類している抗生物質への耐性が、様々な由来のサルモネラ株から検出されている。耐性菌自体も問題であるが、その耐性がさらに他の病原菌に移行可能であるという事実も重要である。
サルモネラでは、「特に重要」な抗生物質のグループに対する耐性率が非常に高い検体もあった。鶏および鶏肉由来のSalmonella Paratyphiおよび七面鳥および七面鳥肉由来のSalmonella St.Paulは、キノロン系およびフルオロキノロン系への耐性率が60~85%であった。このような血清型のサルモネラは上記の食品中で増加しているが、ヒトでの感染の原因となっている例は少数である。第三世代のセファロスポリンへの耐性は1.1%で、他の抗生物質に比べて極めて低かったが、血清型別にみると高率のものがあった。
様々な病原菌の代表的な抗生物質耐性に関する2009年のモニタリング調査では、サルモネラの高い耐性率が2000~2008年の報告と同様に確認され、動物および食品由来の他の菌でもやはり耐性率が高いことが示された。フルオロキノロン系への耐性率は特に鶏由来のサルモネラ分離株と大腸菌分離株で高かったが、鶏と子牛由来のカンピロバクター分離株でも最高3分の2が耐性であった。第三世代のセファロスポリン系への耐性は、鶏由来の大腸菌分離株の5%以上と子牛からの大腸菌分離株の一部にみられた。
上記2回の調査ではフードチェーンの様々な段階での耐性率を分析した。動物と動物食肉由来の分離株の耐性パターンの比較から、食肉生産において病原菌が食肉に移行する可能性が示された。食肉を経由してこれらの耐性菌が消費者にたどり着く可能性はあるが、調理における一般的な衛生対策によって感染を防ぐことができる。

 耐性率のさらなる上昇を防ぐには、ヒトと動物の治療において抗生物質の使用を必要最低量に抑えるべきである。抗生物質耐性のリスクアセスメントを行うためには、腸内細菌叢の病原体と菌の耐性発現のモニタリングを行うことが必須である。ドイツ政府の「ドイツ抗生物質耐性戦略(DART:German Antibiotic Resistance Strategy)」には、このモニタリングのほか、動物とフードチェーンにおける抗生物質使用を最小限にするための対策が含まれている。

http://www.bfr.bund.de/cd/53374                      国立医薬品食品衛生研究所より