コラム: 薬剤耐性菌が食品衛生にも影響
2010年12月26日(日)
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抗生物質を分解してしまう酵素NDM-1(ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ)を産生
してしまう細菌が、日本でしかも腸内細菌で見つかったのは記憶に新しい。このNDM-1とい
う酵素は抗生物質を分解してしまうために、これを産生できる細菌にとっては抗生物質が効き
にくくなる。
しかも腸内細菌であるということは、腸の中で他の細菌との接触が多く考えられるために遺伝
子の伝達が楽になっていく。
このように多くの抗生物質に耐性を持った細菌は、病院などではたびたび見つけられ、弱った
患者にとっては治療の仕様がないほど非常に怖い細菌となっている。今までに、病院などでは
院内感染として大きな問題になっている細菌は数種類あるが、中でも有名なのはメチシリン耐
性黄色ブドウ球菌(MRSA)そして多剤耐性緑膿菌(MDRP)である。これらは遺伝子を交
換しながら耐性を強固にしている。つまりほとんどの抗生物質が効かなくなっていくというこ
とだ。
MRSAやMDRPなどは、酵素によって薬剤耐性を獲得するのではなく、薬剤を自分の細胞
から外に押し出してしまうことができる。
つまり、酵素により薬剤を分解してしまうものや、薬剤を自分の細胞から押し出してしまうこ
とによって細菌自身を守ろうとしているのだ。
現在のところ、これらの細菌の病原性は決して高いものではないが、いずれは病原性の高い細
菌がこれらの遺伝子を受け継ぐようなことがあれば、我々の食品衛生に対する考え方はまた大
変にヒステリックな状況になるだろう。
しかしながら、オランダではいろいろな食肉について調査を行ったところ、35検体中5件から
MRSAが検出されている。
MRSA自体は普通の黄色ブドウ球菌なので、普段通りの調理で問題は比較的少ないが、以上
のことから今後のことを考えると、病原菌の薬剤耐性菌が出てくることは非常に恐ろしいこと
だ。
また、薬剤耐性菌は消毒薬についても報告があり、細菌を殺すためということで必要以上に
使用することは少なくとも考えなければならない。
食品衛生の世界でも、薬剤耐性菌については真剣に考えなければならない時代といえるだろう。
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