還暦をもうまじかにして、小生は食品衛生や品質管理に仕事のほとんどを費やしてきたことを思うと、その間いつも頭から離れないことは、わが国はどこまで食品衛生がエスカレートしていくのか、そしてそれが必要なのかということでした。

現在小生の周りにも、花粉症、アトピーなどのアレルギー疾患を抱えている人は多くいます。このような人の数は戦前から比べて明らかに増加しているといわれ、この10年間でも7倍という驚異的な増加にいたっています。しかもその患者の分布は都会に多く地方では少なくなっています。そして国別に見ても日本の患者発症率は他国と比べて明らかに多いといわれています。数年前に英国の科学雑誌「ネイチャー」で発表された論文では、生後1歳までを牧場で育った人は花粉症になりにくかったといいます。これは牧場のいたるところにある家畜の糞が乾燥して浮遊しているのを吸い込んでいるからだということです。この論文で重要なことは、糞の中には多くの細菌がおり(約3分の1)、これらが乾燥して死んだかけら(エンドトキシン)が人の体内で徐々に免疫反応を構築していくということです。

 「きれいは汚い、汚いはきれい」これは【マクベス】の中の魔女が唱える一節ですが、食品の安全安心を考えるときにも考えなければならないのは、やはりこのようなことを念頭にしたバランスであると思います。つまり、とことん細菌を減らすことに夢中になるのではなく、あくまでもわれわれの健康のための食の安全安心であることを忘れてはいけないということです。健康のための食品衛生であるいじょう数々の過激な衛生管理は蛇足でしかありません。木を見て森を見ない食品衛生管理はもう終わりにしましょう。

                                                                        食品・環境安全ネット事務局

                                                                                      代表 池亀 公和