連載 食中毒菌と人と健康②

2011年10月15日(土)


 


私たちの健康な状態とはどのような状態をいうのでしょうか。そう考えるとなかなかその明確な表現が出

てきません。

WHO(世界保健機関)の健康の定義は、今から60年ほど前に作られたもので、以下の通りです。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.


(健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会

的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳))

 わかりやすく解説すると、健康とは病気や虚弱でないというだけではなく、身体の体力値が高く、知的

には適切な教育を受け、社会的(家族、地域社会、職場)には豊かな人間関係があり、精神的にも安定し

ている状態である(精神的健康・社会的健康・身体的健康のバランスが取れた状態)というものだそうで

す。         

広義には大変範囲が広くなってしまいますので、ここでは精神的、社会的という言葉は除いて身体的な部

分についてだけ注目してみます。

 私たちの体は、外から入ってくる異物を排除しようとする免疫機構というシステムを持っています。私

たちの体の中に病原菌が入ろうとすると、胃酸によってそれが妨げられ、これを通り過ぎてしまうと、下

痢や嘔吐といった形で病原菌を体から外に吐き出そうとします。それでも病原菌が腸まで到達すると腸内

細菌叢といういろいろな細菌の集団の中の乳酸菌などによって殺されてしまいます。

さらに、白血球の仲間が私たちの体中で防衛軍になっています。その一つが好中球といい、病原菌などを

食べてくれています。傷口が白くなったりするのは、その細菌の死骸と好中球の死骸です。さらに、私た

ちの体中にはマクロファージという白血球の仲間がいて、病原菌を食べるだけではなく、食べた病原菌の

情報を体中に知らせるための物質であるサイトカインを放出します。これにより他の防衛軍である免疫細

胞にも知らせることが出来、場合によってはその防衛軍の増強を図ったり、飛び道具として免疫グロブリ

ンを放出したりし病原菌を殺します。このようにして私たちの体は、健康であればあるほど免疫機構 とい

う防衛軍 によって守られているということが言えます。

 この免疫力を高めるには、体温の保持は大切なことで、平均体温が1℃下がると免疫力は約37%下

がり、平均体温が1℃上がると免疫力は約60%活性化するといわれているように、体温は免疫力を大きく

左右します。風邪をひいたとき熱が出るのも、体温を上げて免疫力を上げようとする防衛反応といわれて

います。また、体温が低いと体内の細菌に対する抵抗力が低下し、腸内では悪玉菌や有害菌が増殖して

様々な病気や感染症の原因にもなってしまいます。

 そしてそつまた、運動をしたりストレスをなくすなども大切ですが、私たちの日々の生活の中では、免疫に大きく

かかわる腸内細菌のバランスを整えるため、乳酸菌を多く取るなどの食生活の改善が鍵を握るといわれて

います。

健康を維持するということは、食品衛生のベースとも考えることができるのです。つまり、私たちの健康

に焦点が合わない食品衛生は邪道ともいえるのです。 

 私たちが食品衛生を進めていく目的は、私たち自身の健康を維持向上させるためです。

このように考えると、食品工場などで次亜塩素酸ナトリウムで手を消毒するなんていう考えは出てきませ

んが、クレームをなくそうという目先の事だけを考えると、ついヒステリックな考えが出てきてしまいま

す。

このような多くの間違った考え方でどれだけの手指が荒れてしまい、さらには食品に対するリスクを増や

し、また、どれだけ無駄な経費を食品工場が負担してきたことでしょうか。

                              食品・環境安全ネット事務局  池亀 公和