ドイツを中心にEUで猛威をふるっている病原性大腸菌O104はその後どうなっているのか。

現在、感染が確認されている国はドイツを筆頭にオーストリア、デンマーク、フランス、オラン

ダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスそしてイギリスです。

アメリカでもドイツのハンブルグから帰ってきた人たちが出血性の下痢を発症していていること

が報告されており、今でもEUでは数人のレベルで患者の報告がされています。

 そしてその患者数は現在、欧州および北米の計16カ国で合わせて4,075人および死亡者50人

が報告されています。そしてその患者の86%が18歳以上をしめています。

 さらに、女性での感染が多く、67%を占めていますが私の思うところでは、女性の方が生野

菜をたくさん取る食生活ではないかと勝手に想像しています。しかしながらこれは今までの腸管

出血性大腸菌による食中毒患者の多くが小児であったこととまったく異った状況です。つまりそ

れだけ今回の腸管出血性大腸菌O104の毒性が高いとも言えるでしょう。

 このドイツを中心に流行している病原性大腸菌がさらに怖いのは、これまでの病原性大腸菌と

は異なる新種ではないかと言えることです。

 この新種と考えられる腸管出血性大腸菌O104の遺伝子配列を調べたところ、標準の病原性大

腸菌と遺伝子配列が7%も異なっているということです。

 つまり今回ドイツを中心にEUで流行しているO104は明らかに新種の病原菌であると考えられ

るということなんです。

 さらに、この新種の病原性大腸菌の恐ろしいところは、薬剤耐性菌であるということです。し

かもアミノグリコシド系耐性、マクロライド系耐性、さらにはβ―ラクタム環開裂型の抗生剤に

も耐性という多剤耐性の病原性大腸菌ということらしいのです。

 したがってふつうの抗生物質では治療は出来ないという大変恐ろしい細菌といえます。

 この新種の病原性大腸菌については、7月2日にコラムとして詳細を掲載していますので省略し

ますが、原因の究明に関しては、2011年7月7日、欧州食品安全機関(EFSA)はいくつかのバ

ッチのエジプト産フェヌグリーク(fenugreek)種子が大規模食中毒の原因である可能性が最も高いと特定しました。

そしてエジプトから輸入されたフェヌグリーク(fenugreek)種子が腸管出血性大腸菌O104:

H4に汚染されており、ニーダーザクセン州(ドイツ)のある園芸農場がこの種子を用いてスプ

ラウトを栽培し、このスプラウトが感染源となった可能性が高いとされています。

 これを受け、欧州連合(EU)は消費者保護のため、関連するバッチのフェヌグリーク種子を

回収し、また2011年10月31日までエジプトからのフェヌグリーク、特定の種子、豆およびスプ

ラウトの輸入を禁止しています。これらの措置は現在実施中です。

フェヌグリーク種子は、カレー粉のスパイスミックス、チーズやマスタード製品、母乳ティー

(母乳の分泌を促す効果のあるハーブティー)、サプリメントなど様々な製品に使用されてお

り、また、焼き菓子やパンの調味料(seasoning)にも使用されています。

フェヌグリーク種子は、主にカレー粉などのスパイスブレンドに挽いた状態で用いられており特

にインドカレー用スパイスブレンドの一般的な成分です。スパイスの製造過程では、菌を減少さ

せるために熱湯や水蒸気処理などの加熱処理が行われますが、これは病原性大腸菌に対しても有

効です。自家製のスパイスブレンドの場合、フェヌグリーク種子に完全に火を通せば安全です

(鍋でロースト、加熱調理など)。

実験では、一部の病原性大腸菌が根を通って植物の内部に侵入する場合があることが知られてい

ます。アルファルファの場合、植物内部に菌が存在することがすでに確認されていおり、フェヌ

グリーク種子については現時点でまだその詳細は明らかになっていません。喫食前に種子に完全

に火を通すことが大切です。

我が国においても今年4月から5月にかけて、団子の腸管出血性大腸菌O157や焼き肉屋の腸管出

血性大腸菌O111などはまだ記憶に新しいところですが、EUで流行したような新種の恐ろしい

病原性大腸菌が何時上陸するかわかりません。腸管出血性大腸菌O157がアメリカで発見されて

から数年でわが国でも園児2名が亡くなるという事件が発生しております。

EUにおいて現在のアウトブレイクが収束したとしても、ヒト−ヒト感染や感染したヒトによっ

て汚染された他の食品を介して腸管出血性大腸菌O104感染患者が広範囲に発生することが予想

されます。私たちの食生活の中で、食中毒原因微生物がこの数十年でだいぶ変化してきました。

変化の一つが多剤耐性を含めた意味で強毒化が挙げられるでしょう。

われわれの食生活がある意味で脅かされてきたということを改めて感じ、益々の安心安全な食生

活を目指す事が大切であると考えます。

                          食品・環境安全ネット事務局   池亀公和