コラム: これからの病院給食

2011年7月18日(月)


 


今回は病院給食についてお話しましょう。現在、日本全国の病院に入院している患者数は、約

1,400,000万人ほどと言われています。その患者たちは毎日病院から与えられたいわゆる病院

食を食べているわけです。

 最近では、その病院給食が見た目にもまた食べても大変おいしくなってきたように思えます

が、現実にそれはまだまだ少数であり貧弱というよりも全く食欲をそそらないような食事を出

しているところはたくさんあります。

 本来、病院は傷んだ体や心を回復させ癒すところであり、「医食同源」というように医療の

中に組み込まれた要素として考えるべきであると思われます。私たちが健康な時には、積極的

においしそうであったり、体に良さそうなものを探して食べることが出来ますが、病院に入っ

てしまえば、出された物を食べるしかありません。そしてそれらはほとんどプラスチックの器

に入って出てきます。本来であれば、病院に入ったからこそ食生活が楽しくなるような食事が

出てこなければなりませんが、現実には全く健康なときと反対の環境に閉じ込められてしまう

のです。

 手術をした後の患者に対しては、無菌的な食事を提供しなければならないことがあり、調理

した食品をそのためにオートクレーブという圧力がまで滅菌してから提供するようですが、一部

の病院では、それでは食欲が出ないということで、おいしくかつ衛生的なクックチル方式などを

応用するなどの工夫も見られますが、そのような病院はまだまだ少数であり、「医食同源」とい

う言葉が充実しているところは全国でも少ないようだ。

 また、近年センター方式といわれ、一箇所の給食専門施設で作られた食材メニューを各病院へ

供給するシステムが採用されるようになってきました。しかしながら、これで何が改善されたか

というと、病院側のコストの削減が主な効果で、実はこれも多くの問題を含んでいます。

 そのセンター方式の問題点としては、医療機関の責任性の低下、そして病院給食の質的低下が

さらに進むということ、さらにまた、営利化の推進等があげられています。

病院給食のセンター化について最も考えなければならないことは、このような経営者や従業員側

の問題として考えるのではなく、患者にとってはどのような影響が生まれてくるのかと言うこと

です。つまり、センター化では個々の患者に適切な給食を供給することが難しいこと、そして、

最も恐れなければならないことは、食中毒の発生が大規模化することです。それぞれの病院で

作られていた食品は、その病院でしか提供しないため、食中毒が発生してもその病院だけで済

んでいました。つまりリスクを分散できていたのですが、センター方式で病院給食が提供され

るようになると、大規模食中毒の発生も考えられ、対象は病人であり、最も肉体的に弱い立場に

あるため、その結果は非常に悲惨なものが考えられます。

まず、病院給食の目的は、疾病を持つ入院患者の健康回復のための援助であり、直接治療に関わ

る食事(病人食)を提供するものでなければなりません。こうした目的にかなった、「医食同

源」を理解した病院がどれだけあるでしょうか。これは医者および関連団体などの関係者が、自

分たちの環境だけを優先するのではなく、患者中心の考えに戻り、「医食同源」と言う認識を何

処までもてるかと言う問題になってしまいます。

我々が普段利用するホテルがセンター方式の給食システムを取り入れていたら、はたしてそのホテルを我々は利用するでしょうか。

病院給食については対象者が体力的に、または免疫学的に弱者であり、食事の選択が出来ないと

いう環境の中で、提供する側は何を目的とするのかを良く考えれば安心で、安全でさらには楽し

める食事の提供が出来るはずです。食事しか楽しみの無い、また食事によって健康を回復しても

らいたい患者に対して、利便性と経済面だけでこのセンター方式というシステムを利用すること

は本末転倒というしかありません。

病院給食をもう一度見直す必要性を感じる今日この頃です。

                                  食品・環境安全ネット事務局  池亀 公和