以上より、現在常識とされている10℃以下という低温温度管理の経緯が理解されたと思います。

そこで、食品の低温管理を行う上で理解しておかなければいけないデータの一部を紹介します。

 表1.のように多くの病原菌が、10℃以下でも発育できます。

これら以外にもグラム陰性菌としては、シュードモナス、アルカリゲネス、アシネトバクター、

フラボバクテリウム、エンテロバクターなどをはじめ、グラム陽性菌では、ミクロコッカス、乳

酸菌などいろいろな食品に付着している細菌が10℃以下で充分に発育が可能です。

 食品の冷蔵保管の常識としての10℃以下は、今後、コーデックスなど国際規格である4℃以下

をもっと一般の食品衛生常識として広げなくてはいけないと感じます。

 さらに、食品の低温管理で解決できない大切な問題があります。

 それは、近年分ってきた少量感染菌の存在です。以前は食中毒にかかるためには数百万個の病

原微生物が感染する必要があるとされてきました。

 ところが、腸管出血性大腸菌O157が今から17,8年ほど前にアメリカで死者4名を含む大量

感染者が出て以来、今まで少量では感染発症しないと思っていた微生物までが少量つまり数十~

数百個の感染で発症することが分ってきました。

 現在わかっている主な少量感染菌としては、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸

菌そしてノロウイルスと、現在わが国の食中毒原因菌のトップを占めているものばかりです。

 カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌は主に肉類の一時汚染によることが多く、

コールドチェーンにおいて低温保存してもそのまま生き残ったままになってしまいます。

 また、ノロウイルスによる食中毒の原因としては一次汚染と二次汚染が考えられ、食中毒原因

の対象食材としてもいろいろあります。これら詳細は各資料を参考にしていただきたい。

 今年4月に発生したユッケによる腸管出血性大腸菌O111食中毒事件にしても、ほんのわずか

しか食べていない子供が亡くなるなど、典型的な少量感染菌による事件といえるでしょう。

 このように少量の細菌数で感染が成立してしまうということになると、低温での保存はあまり

効果がないということにもなります。

 確かに低温管理は食品衛生の基本ではあります。しかし菌を増やさないという低温管理では防

げないハザードが存在しているのです。

 このようなハザードに対しては、菌をしっかり殺すという管理も食中毒予防の三原則に入って

います。

 獣肉についている微生物の多くは少量感染菌であり魚についている病原微生物は少量感染菌

に対して腸炎ビブリオなど大量感染菌であるということが言えると思います。

したがって、われわれは魚を刺身で食べますが、それによる食中毒原因菌のほとんどが腸炎ビブ

リオによるものになり、大量に菌を摂取しなければ食中毒は発症しません。したがって、このよ

うな食品については低温管理は大変に重要なことと言えます。

 しかしながら、少量感染菌が付着しているかもしれない生肉を食べるというのは、低温ではハ

ザードを低減または回避できませんので、かなりリスクが高いと言えるでしょう。

 私たちの食生活の中においても、肉と魚ではこのように全く異なった衛生管理が必要であるこ

とから、調理方法においいても当然異なった管理が必要となります。

飽食の時代といわれるようにってから数十年がたち、少し飽食も蛇足の時代になってきたかもし

れませんね。

表1.

http://shokunoanzen.net/file/image/53-e0bc19f752bc5ef4ee77d1475dc41408.jpg

                                                                食品・環境安全ネット事務局 池亀公和