コラム: O104とは

2011年7月2日(土)


 


 ドイツを中心にEUにおいて大変猛威をふるった食中毒については、多くの情報が流れていま

すが、この菌O104についてまとめてみました。

微生物は絶えず変異を繰り返し、周りの環境の中で生き抜いていきます。その変異にはいろいろ

な方法がありますが、現在最も恐れられている変異は遺伝子の交換です。その最も脅威なのが耐

性遺伝子と言われている多剤耐性菌になる遺伝子の交換です。

 この遺伝子の交換によって、Aという薬剤耐性菌は周りにいるBあるいはCといった薬剤耐性

遺伝子をも取り込んでしまい、結果的にどの薬も効かない多剤耐性菌を作ってしまうのです。

 今回、O104について考えられているのは、腸管凝集性大腸菌(EAEC)あるいは腸管凝集

性接着性大腸菌(EAggEC)と言われている大腸菌が腸管出血性大腸菌(EHEC)の志賀毒素産

生性を獲得したものと言われています。

つまり細菌の性格的には新しい病原性大腸菌の発現ということが言え,腸管凝集付着性ベロ毒素産

生性大腸菌 (EAggEC VTEC) O104:H4と呼ばれています。

病原性大腸菌(下痢原生大腸菌ともいう)は現在

・腸管病原性大腸菌(EPEC):小腸に感染して下痢を起こす

・腸管組織侵入性大腸菌(EIEC):大腸に感染して赤痢様症状を起こす

・腸管毒素原性大腸菌(ETEC):小腸に感染し増殖時毒素を出す

・腸管出血性大腸菌(EHEC):血便を起こし、ベロ毒素を産生する

・腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC):比較的新しい菌群であり、腸管に付着しやすい

の5種類に分けられていますが、変異はこの仲間だけで起こるのではなく全く異なった細菌から

も遺伝子交換が行われます。

例えば腸管出血性大腸菌(EHEC)の出す志賀毒素というのは、明治時代の細菌学者志賀潔先生

が発見した赤痢菌の毒素(赤痢の学名は志賀先生の名前からShigellaという)を取り込んだも

のとされています。

また、腸管出血性大腸菌O157などは、一般に小児で重症化しやすいが、O104については

多くの大人が重症化している。これは、腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)が腸管に付着しやす

い性質を持っているためではないかとも考えられている。
 

このような経緯で腸管凝集付着性ベロ毒素産生性大腸菌 (EAggEC VTEC) O104:H4の発現が

考えられますが、その詳細はまだ未決です。

 病原菌はこれからも変異を続け、また新たな病原菌が私たちに挑戦してくるでしょう。

私たちはこのような状況を出来るだけ改善する仕組みをいろいろな形で構築していかなければな

りません。

防衛するという手段においては、何よりも一般的衛生管理(PRP)をしっかりと構築する必要

がありますね。

                                   食品・環境安全ネット事務局 池亀公和