わが国で、食品を冷やして日持ちを良くするという考えは、比較的歴史が浅く、幕末から維新

にかけて横浜や長崎に多くの外国人が住み着くようになり、彼らが食べる肉類の日持ちを良く

するために氷が使われるようなり、氷のビジネスが始まってからです。 

 したがって、ここからわが国での食品の日持ちを良くするための温度管理が始まったといえ

るかもしれません。

 それまでは氷室といって、冬に出来た氷や雪を溶けないようにしてためておくほら穴や小屋

がありました。

 氷室は、奈良時代に、既に使われていました。

この氷室では、雪や氷をおがくずやわらで包んで入れて、夏まで保存していました。

 夏になってから取り出され、水やお酒を冷やすのに使われたようです。また、氷を削ってか

き氷のようにして食べていたという記録(枕草子:あてなるもの、上品なものとして金属の器

にかき氷を入れシロップをかけたもの)もあります。

 明治維新のころになると、氷のビジネスの一環として函館から船で氷を運ぶことが出来るよ

うになり、一般庶民にも氷が行き渡るようなりました。

 ところが、やはり天然の氷ですので、全てが清潔な状態ではなかったのでしょう。この氷水

を飲んだお年寄りが、良く下痢をしたことから、不相応なことに挑戦することを「年寄りの冷

や水」と言うようになりました。今でもこの言葉はよく使いますね。

 その後、間もなくわが国でも製氷機で氷を作ることが出来るようになり、氷の需要はどんど

ん延びたようです。

 大正時代になってから徐々に氷の冷蔵庫が食品業者や一般庶民にも普及しだし、昭和30年代

ごろまで続きます。

 氷の冷蔵庫については、たぶん60歳ぐらい以上の方たちでしたらまだ記憶にあると思います。

魚屋さんや肉屋さんには毎朝氷屋さんが来て、その冷蔵庫に氷を入れていく光景がありました。

 しかし、今でも氷の冷蔵庫を使うお店が、以外と多くあるようです。 一部のこだわりを持

ったお寿司屋さんなどでもネタを入れる冷蔵庫には氷を使っているところがあります。

 氷による冷蔵の優れているのは、食材に最も適した湿度を保つ、食材に温度変化が少ない、

庫内に冷気を送る風が吹かない 、溶け出た水が匂いを外へ運び出すなどの利点があります。

 したがって、今でも電気冷蔵庫は氷の冷蔵庫に近づけようとして開発がおこなわれているよ

うです。

 昭和30年代になると電気冷蔵庫が食品製造施設はもとより一般庶民にも普及されていきます。

 テレビ、洗濯機、冷蔵庫を三種の神器などと言い、これらを持っている事は当時のステイタ

スでした。

つづく                             食品・環境安全ネット事務局  池亀公和